10年、20年と長いこと介護業界で働いてきたベテランの介護士でも、認知症ケアが上手くいかないことは多々あります。
私自身、介護士として働いて10年目になりますが、まだまだ認知症についての知識も経験も足りていないと感じることが多いです。
そこで今回は、どれか一つでも認知症ケアのヒントになればと考え、ケアが上手くいかない理由を紹介します。
意思疎通が難しい
認知症のある利用者さんを対応していて一番多いのがこれではないでしょうか。
話すことは出来るけど、話が嚙み合わない。
何度も同じことを繰り返して堂々巡り。
すぐに忘れてしまい、聞いてない!と怒ってしまう。
なんとかコミュニケーションを取ろうとしても、会話にならずに諦めてしまうことはありませんか?
認知症は言葉にも障害は出てきますが、普通に話せる方もたくさんいます。
なので、何とか理解してもらおうと意思疎通を図ろうとするも上手くいかず、落ち込んだりイライラしてしまう人も少なくありません。
認知症の方との会話は大切ですが、意思疎通を図ると考えるよりも、相手の気持ちを尊重して発する言葉を受け入れる気持ちで臨むと介護者の気持ちも楽になります。
ケアの内容が適切かわからない
認知症には、ゆっくりと確実に進行していくという特徴があります。
少し前まではこの方法で問題なかったのに、少し時間が経ったらその方法ではダメになってしまった。
前までは嫌がらなかったのに、段々と拒否されるようになってしまった。
同じことをしているのにどうしてだろう…という経験はありませんか?
それは、認知症の方からのサインです。
認知症の方は、「こうして欲しい」「これは嫌だ」と自分の希望を言葉で伝えるのが難しくなってきます。
そのため、ケアをする側はその態度や表情を見ながら「こうして欲しいのかな?」「これが嫌だったのかな?」と仮定した状態でケアをしているはずです。
それが適切であれば問題ありませんが、間違っていた場合は拒否されたり、時には暴言を吐かれたりもするでしょう。
本人のためにやっているのに!と怒ってしまうかもしれませんが、それは本当に本人が望んでいたケアだったのかを考えることが重要です。
私はこうされたら嬉しいではなく、相手がして欲しい事を探していきます。
自分一人で対応するのではなく、同僚のケア方法を聞いたり、上手くいった事例を真似したりと情報を共有しながら様々なパターンの対応策を知ることで、適切なケアに近づくことが出来るでしょう。
経験のみに頼ったケアは危険信号
たくさんの認知症の方と接していると、声替えの仕方、表情のとらえ方など、今までの経験からどのように対応すればいいのかが漠然と自分の中で確立されてきます。
相手が安心できるような声掛け方法や、表情を読みとるスキルは大切ですが、その方法が100%通用するとは限りません。
むしろ、今までダメだと思っていた方法が、他の人だと上手くいくパターンもあります。
「あの人の時は、これで上手くいったから。」
「これは失敗したから、試さないようにしよう。」
「こうしておけば、認知症の方でも大丈夫。」
このように、目の前を見ないで自分の経験だけに頼ってしまうと、一人ひとりの個別性を見失ってしまいます。
成功した方法も、もしかしたら偶然だったかもしれませんし、失敗した方法もその時たまたま機嫌が悪かっただけかもしれません。
経験によって得られるスキルはたくさんありますが、それだけに頼り過ぎないようにしましょう。
ケアを拒否されてしまう
介護拒否や援助拒否は認知症の方に限ったことではないですが、拒否される理由がわからくて困ってしまうことがあります。
ケアを拒否されるだけでなく、暴言を吐かれたり暴力を振るわれたりすることもあるでしょう。
このような理不尽な目にあったとき、「病気だから仕方ない」と頭ではわかっていても、実際にそういった場面に遭遇すると精神的に辛くなってしまいます。
私達介護する側も人間なので、嫌な思いをしたら怒ったり、悲しくなったりするのは当然です。
そもそも、ケアを拒否されるのは様々な要因が重なって起きています。
・気分や体調が優れず、機嫌がわるい。
・1人にして欲しい。
・たまたまタイミングが悪かった。
・相性の問題。
成功事例を言葉で表現しにくい
まとめ
なんとかして認知症の方を助けてあげたい!そう思っていても、あなたの望むような結果が得られないことの方が多いでしょう。
どんなに熱意をもっていたとしても、ケアを受ける本人がそれを望んでいなければ空回りしてしまいます。
認知症ケアがなかなか上手くいかないなと感じた時には、一旦立ち止まって違う方向からアプローチしてみましょう。
ちょっとした変化でスムーズにいく事もありますので、本人が何を望んでいるのかを探ることが大切です。
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