認知症の方への虐待はケアの理想と現実にギャップがあるのが原因

厚生労働省の発表によると、2018年の時点で7人に1人の高齢者が認知症を患っている計算になります。

その後も2019年、2020年と認知症の患者数は増加していく一方です。

そんな中で、認知症の方に対する施策の方針となる「認知症施策推進大綱」では以下のように記載されています。

「認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会」

例え認知症になったとしても、尊厳を持って最後まで自分らしく生活できる社会を目指すとされていますが、実際の介護の現場では認知症の方に対する不適切なケアやグレーゾーンな介助、虐待が後を絶たないのが現実です。

今回は、なぜ介護施設でこのような不適切ケアや虐待が頻回に起きるのかを考えていきたいと思います。

目次

認知症の方への不適切ケアや虐待はなぜ起きる?

認知症の利用者さんに対するケアは、個別性が高く100%の正解はありません。

そこで大きく4つのポイントにわけて考えていきたいと思います。

1、介護施設の慢性的な人員不足

認知症ケアの基本は、介護士と利用者さんとの間で信頼関係を築くことにあります。

私達が誰かと仲良くなって友達関係になったり、気心知れた関係になったりするのに時間が掛かるように、認知症の方との信頼関係を構築するのにも当然それなりに長い時間が必要です。

「なじみの関係」と言われることもありますが、このような「なじみの関係」となった職員が数人いるだけで、認知症の利用者さんは安心して生活を送ることが出来ます。

グループホームのような小規模な施設は、このような「なじみの関係」を作りやすいので、認知症の方でも精神的に安定した生活が送りやすいと言えるでしょう。

しかし、大規模な介護施設に関わらず介護業界は慢性的な人手不足が続いています。

今後も、この状況が変わることはまず無いでしょう。

他の業種と比べて離職率も高く、人員不足に加えて介護職員の入れ替わりが激しいと「なじみの関係」作りも上手くいかず安定したケアが提供できません。

また、普段から関わっている人が少ないと、認知症の方の些細な変化や「なんだかいつもと違う」といった気づきが遅れてしまい、みるみるうちに状態が悪化していくこともあります。

認知症の方の症状を軽減したり、進行を遅らせるためには、介護職員の定着率も重要です。

2、早期発見が難しい

認知症は他の病気と違って、痛みや熱など目に見えてわかる症状がありません。

症状もゆるやかに進行していくので、年齢のせいにされて発見が遅れたり、記憶障害が表だって出ないタイプの認知症だと見過ごされたりすることも多いのが現状です。

また、周りが気づいても本人が嫌がって認知症の確定診断を受けに行かないということも起こります。

ある調査によると、認知症の疑いから診断を受けるまでにかかる期間は、平均で1年2か月。

そこから介護保険のサービスを受けるまでに平均で1年5ヵ月もかかっています。

認知症を治すことはできません。

しかし、早期発見し治療を開始することで進行を遅らせたり、認知症状を和らげることができる可能性は十分ある病気です。

この調査からもわかるように、認知症の方が専門医に受診して確定診断を貰うまでにはかなりの時間を要しています。

もちろん、この期間にも認知症は確実に進行していくので、発見が遅れて気づいたときには徘徊や異食、暴力行為などの周辺症状が出てしまい、対応困難な人として扱われてしまうのです。

3、矛盾している認知症ケア

「認知症の利用者さんと関わるときには、目線を合わせて、ゆっくりと話しかけながら相手のペースで援助しましょう。」

認知症の研修なんかではお決まりのセリフです。

確かに、ユマニチュードでも言われているように、相手に合わせてゆっくりと援助をすることはとても効果的な方法です。

しかし、少ない人数で多くの利用者さんの援助をする介護現場では、認知症の方であっても効率を優先した援助が行われます

起床介助や就寝介助、入浴介助など限られた時間で、決められた援助をこなすだけで精一杯な現場でゆっくり関わる時間なんてありません。

本人のペースに合わせてたら終わらない!というのが本音です。

このように作業効率を求められる介護施設では、中々言うことを聞いてくれない認知症の利用者に対して職員のフラストレーションが溜まりやすく、暗黙の了解で不適切ケアが日常的に行われている可能性があります。

4、自由と安全の両立が困難

認知症のある利用者さんには、「本人が望むことを、自由にしてもらいましょう。」とよく言われます。

しかし、利用者さんの安全を考えないといけない介護施設では、これは簡単なことではありません

例えば、切り絵が好きな認知症の利用者さんがいても、危ないからとハサミを取り上げてしまう。

お化粧が好きな利用者さんが、1回だけ口紅を間違って食べてしまったことがあるから、お化粧道具は全て没収。

このように、事故の可能性がある、リスクが高いと判断されたら「認知症の方に対する自由」はいとも簡単に奪われます

人員配置に余裕があれば、職員が見守りのもとで自由に好きなことができるでしょう。

しかし、現実としてそこまで余裕がある介護施設はほとんどありません。

そのようなひっ迫した環境では、本人の希望が通らないだけでなく、まだできる能力があるにも関わらず様々な制限をかけられてしまう事で余計に認知症の進行が進んでしまうこともあります。

このようなストレスから、認知症の利用者さんが様々な周辺症状を引き起こし、職員からも「手のかかる人」「面倒な利用者」というレッテルを貼られることで、不適切なケアに繋がっていくのです。

まとめ

認知症ケアに求められている理想が高く、現実的に見ても理想に追いついていない介護施設がほとんどだと思います。

人手不足で時間もない中で、この理想を達成させるのは容易ではありません。

この理想と現実のギャップに苦しむ介護士の方もたくさんいると思いますが、この高すぎる理想が虐待や不適切ケアの原因になっているとも言えるのです。

特に、3番目に挙げた「矛盾する認知症ケア」はドキッとする方も多いのではないでしょうか

  • 食事が中々進まない認知症の利用者さんに、半ば強引に食べさせる。
  • 着替えを嫌がる方に対して、無理やり着替えてもらう。

このようなケアが慢性化している施設が多いのが現状です。

どれだけ理想論を唱えても、それを実現できる環境が無ければそれは机上の空論でしかありません。

大切なのは、その理想を叶えるのではなく、どれだけ理想に近づくことができるかです。

「こんなの無理だよ」と投げ出すのではなく、1人ひとりが少しでもこの理想に近づく努力をしていくことが重要だと考えています。

そうは言っても、人員不足でどうにもならないこともあるでしょう。

これを書いている私自身、きれいごとだなと思っている気持ちもあります。

なので、認知症の利用者に対するケアに疑問を持つようであれば、あなたと同じ考えを持った職場に転職した方が心の安定を図れます。

本当にこんな援助でいいのかな?このままだと、いつか自分が虐待してしまうんじゃないか。

そんな風に考えるのは、あなた自身ではなくその環境に問題があることの方が多いです。

今、あなたがしている認知症の利用者さんのケアに自信が無いのであれば、思い切って環境を変えるのも一つの手段です。

 

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こよみ
介護士歴10年
介護福祉士/老健/有料老人ホーム/サ高住
管理者と現場主任を経験。
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